盆踊り復活と地域行事のこれから

例年、修善寺のお盆は毎年8月1日からの3日間で、修禅寺での(法要)と盆踊とが開催されてきました。

しかし、昨年の夏、盆踊りが無期限中止になりそうだと護寺会の役員から相談を受けました。コロナ禍で中止も続き、今後はこのまま法要のみの開催で話がまとまりそうだとのことでした。

寺町らしい夏の風物詩。このまま途絶えさせてしまってはいけない。盆踊りの風景を修善寺に残したいと思い、人力車の島川さんと企画運営を引き受けることになりました。 

お寺の関係者と護寺会の方々との顔合わせや打ち合わせ、盆踊りの演目を決めたり、練習会にきていただく踊り手の方々に声をかけたり。夜店の出店を地域内の事業者さんに依頼をしたり。並行して、周知用の告知ツールやノベルティの制作も進めました。印刷工程はどうしても短縮できないこと、また、周知のためには最低でも一週間は掲示期間を作りたいことからも、大急ぎでデザイン制作に取り組む必要がありました。

一石庵での打ち合わせ風景。定番の盆踊り演目の中からどの曲を選ぶかを相談中。
地元紙の伊豆日々新聞さんに、現状の課題や取り組みについて丁寧に取材していただいた。

印刷費だけは実費でいただけることとなったため、なるべくロスを少なくしながら効果的なツール展開をと考え、告知用にはポスターと回覧板・市内配布用のチラシを。ノベルティには、告知も兼ねたうちわと参加記念のステッカーを制作しました。併せて、SNS用の素材も多く作成し、地域内の事業者に積極的に配布、告知に協力してもらうような方法もとりました。

修善寺らしい和の趣と、盆踊りのワクワクとした空気感を詰め込み、期待感を少しでも高められるようなデザインを目指した。

告知の甲斐あってか、開催日の前夜・前々夜の練習会は、例を見ない盛況ぶりに指導役の方や参加者からも驚きの声が上がるほど。

そして、いよいよ盆踊り当日。小雨が降る中でも多くの人が集まり、とても賑やかな夜となりました。提灯が照らし太鼓の音が響く境内、楽しげに踊る人々の姿を見ながら、やってよかったなと強く感じたのを今でも鮮明に覚えています。

修禅寺の本堂前に設置された櫓(やぐら)とそれを囲むようにして踊る人々。

個性豊かな地域行事は、地域を魅力的にする大きな要素の一つです。住み営む人々にとっては季節の節目の楽しみであり、地域外の人々にとってはその地に赴く動機にもなる。これは、これまでもこれからも変わらない普遍的な価値だと思います。また、住民としても観光産業に携わる事業者としても、地域の年中行事の存在意義を強く感じています。

しかし、盆踊りがそうであったように、現在、多くの年中行事が消滅の危機にあります。これまで行事を支えてきた地域の誰かが、減少を続けているためです。高齢化と少子化、現役世代の時間のなさ。そこにコロナ禍が拍車を掛けたのは言うまでもありません。

これから先、静かに消えていく行事がひとつふたつと出てくる。そして、寂しいね、残念だねという声があがるも、もうどうにもならない。そんな未来がすぐそこまで来ているのを肌身に感じます。

このような状況中で自分には何ができるのか。まずは、この状況を周知することが大事だと思い、今回このテーマで筆を取りました。

地域行事に関しては、運営に携わる住民自身が楽しんでいることが何よりも大事だと私は考えています。

そのためにも、既存の設計に無理があるなら、時代の変化を受け入れ、積極的に仕組みやあり方を見直すことも必要です。そして、次の世代に程よい良いバランスで引き継ぎをしていく。うまくいけば、この先、数年、数十年続けていくことができるかもしれません。

住民が主体となり、楽しみながら開催している地域行事は、パッケージ化された画一的なイベントやキャラクターコンテンツよりも、結果として魅了的な観光資源にもなるでしょう。そして、自分たちが楽しんでいる行事に、観光客の人々も一時的な住民として一緒になって楽しんでもらう。そんなあり方を目指していきたいです。

昨夏の盆踊りを振り返ると、急拵えであったとはいえ、ある程度理想に近い形で開催できたのではないかと思います。今夏も開催予定ですので、ぜひ足をお運びください!

クリックコメントを閉じる

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

修善寺燕舎の店主。生まれ育った修善寺地域の活性化を目指し、お土産物などの商品開発やイベントの企画運営など、様々な活動に取り組んでいる。

おすすめ記事