夏の修善寺温泉で川沿いを歩くとき。足湯に浸かるとき。ひるる、ひーるるるる……鳥のような、鈴が鳴るような繊細な声が聞こえてきます。それがカジカガエルの鳴き声です。
鹿の声のように美しいため河鹿蛙と名付けられたこのカエルの声は、清流の歌姫とも形容され、古来より日本人に愛でられてきました。また、夏の季語にもなっています。
渓流に住まうカジカガエルはこの時期石の隙間に産卵し、孵化したオタマジャクシは流れの緩やかな場所で成長します。
伊豆がまだ海底火山だった時代にできた岩盤と達磨山の溶岩流が織りなす桂川は、まさにジオの恵み、カジカガエルたちのゆりかご。桂川の多様な地形が残されているからこその音の風景ですね。
日中でも聞こえますが、おすすめは夕方から夜。ときに寂しげでもあり、ときには少々不気味にも聞こえる、その捉えどころの無さに惹かれます。寝静まった温泉街で、桂川のせせらぎとカジカガエルの鳴き声、夜風を浴びながらの足湯は格別。これ以上に修善寺の夏を堪能できる贅沢はありません。
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