放送日:2025年1月24日
テーマ:あの『怪人二十面相』に伊豆が舞台の話がある!江戸川乱歩と修善寺温泉
伊豆市のコミュニティーFM・FMISの番組「修善寺温泉 湯けむり談話室」の構成台本用のメモを、参考資料のリンクなどとともに記録に残しています。
メインパーソナリティ:勝野美葉子(修善寺燕舎)
サブパーソナリティ:鈴木創・飯島渉琉(FMIS)
はじめに
今回の放送内容は、当マガジンの冬号巻頭特集のこぼれ話を中心としています。

名探偵明智小五郎が修善寺に!
江戸川乱歩とは…
大正から昭和初期に活躍した、「日本推理小説の祖」とも呼ばれる作家。児童向け文学も数多く手掛け、少年探偵団シリーズが特に有名。修善寺小学校の図書館にも全巻揃っていた。
怪人二十面相
『怪人二十面相』は、変装を大の得意とする怪人二十面相に、名探偵明智小五郎や彼の助手・小林少年と小林くん率いる少年探偵団が挑むものがり。作中のほとんどの事件は東京で繰り広げられるが、「美術城」からはじまるあるひとつの事件では、伊豆が舞台として登場する。
(ぶらり文学散歩:江戸川乱歩編より)—— 物語は修善寺温泉から南に4キロほど南の村に住む美術蒐集家・日下部左門に怪人二十面相から挑戦状が届くところから始まります。慌てふためく左門は、数日前の地方新聞『伊豆日報』の消息欄に明智小五郎が修善寺を訪れているという記事があったのを思い出します。
明智小五郎氏来修
民間探偵の第一人者明智小五郎氏は、ながらく、外国に出張中であったが、このほど使命をはたして帰京、旅のつかれを休めるために、本日修繕寺温泉富士屋旅館に投宿、四—五日滞在の予定である。
記事を確認した左門は、「これだ。これだ。二十面相に敵対できる人物は、この明智探偵のほかにはない。」と急いで修善寺に向かいますが——続きはぜひ作品を読んでお楽しみください。
江戸川乱歩の先祖は伊豆人
江戸川乱歩という名前はペンネームで、世界初の推理小説と言われる『モルグ街の殺人』を書いたエドガー・アラン・ポーに由来している。本名は平井太郎で、父方・平井家の先祖は伊豆・伊東の郷士だった。
乱歩の家系図帳に残る最も古い先祖は、「豆州伊東之郷、鎌田之佳、平井太夫(たゆう)嫡勇十郎右衛門、寿百十三歲、貞享二五年三月七日歿」というもので、伊豆の伊東の百姓。
その十郎の娘(名前の記載はない)伊勢の藤堂高次公に奉仕し、次代・高睦公の実母となり正室になり、冷川御前と呼ばれるようになった。冷川御前の口添えがあり、寛文9年(1669年)に弟・平井友益(ともます)が藤堂家に召し抱えられる。
その子の陳救(のぶひら)というものの代に千石取り(千石の俸祿を受ける富貴な身分)にまでに出世。平井友益を初代として、代々千石を頂戴し、7代目の陳就(のぶより)の代に明治維新になる。この平井陳就が乱歩の祖父にあたる人物
『わが夢と真実』 〜江戸川乱歩全集第30巻〜(光文社文庫)より
乱歩は、「武功ではなくて、女の力によって出世したということが、どうも面白くなかった」と書き記している。
伊東温泉に行って先祖の地を調べに行った際の詳細なエピソードは、『わが夢と真実』に掲載されている。
冷川御前ゆかりの「ごぜんの湯」という温泉入浴施設もあったが既に閉業している。
追記:「ごぜんの湯」の入浴レポートが、「井伊部長の温泉グルメ探訪」に掲載されているのを発見しました!
伊豆市冷川 源泉湯治の宿 ごぜんの湯
https://onsen.surugabank.co.jp/nakaizu/2433.html
乱歩の常宿・仲田屋旅館
乱歩は修善寺温泉では「仲田屋旅館」を常宿とし、「桜」と名付けられた205号室を好んでいた。仲田屋旅館は、明治初期から2004年まで営業をしていた、木造三階建ての大きな旅館。明治期の観光案内によると、岩窟を開いて浴槽とした「岩の湯」が有名だった。乱歩お気に入りの『桜』の部屋は桜の木材を使っていて、とっこの湯越しに修禅寺がみえた。
温泉場のカフェ・honohonoさん情報:
仲田屋旅館の息子さん・植田さんが、お母様の同級生。幼稚園〜小学校低学年の頃、乱歩が来ていたことを覚えてた。植田さんの思い出は、江戸川乱歩さんは頭がボサボサで、おばけみたいだったと。『おばけのおじさん』と呼んでいたそう。
仲田屋旅館の廃業後、当時の趣を残しながら建物はリニューアルされ、「湯の宿・花小道」として営業を開始。現在は1階部分で飲食店や地域作家のギャラリーショップが営業されている。
※滞在時のエピソードは残念ながら見つけることができず…ぜひ情報をお寄せください。
乱歩の滞在した部屋は現存していないが、当時乱歩もみたであろう修善寺温泉の眺めを体験したい方は、「女将のもちより雛」の開催時期が現在唯一のチャンス。
女将のもちより雛
大正から平成までのお雛様を展示する毎年恒例のイベント。
〔会期〕2025年2月15日(土)- 3月3日(日)
〔時間〕10:00 - 15:00
〔入場料〕¥300
〔会場〕花小道 修善寺3465-1
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〔お問合せ〕修善寺温泉旅館協同組合(0558-72-0271)
乱歩の伊豆訪問歴
大正6年(1917年)乱歩23歳
大学卒業後に就職した会社を一年ばかりで無断退職した直後のこと。お金が尽きるまで伊豆の温泉地を放浪します。途中、伊東の温泉宿で谷崎潤一郎の『金色の死』を読むと大変気に入り、これをきっかけに谷崎、芥川、佐藤、宇野らの愛読者になった。
大正15年(1926年)乱歩32歳
専業作家になった翌年のこと。長編の3本同時連載を開始したものの行き詰まり、編集部の原稿催促から逃げ回るように伊豆の温泉を転々とする。まるで重罪犯人が警察の目をのがれて放浪しているような思いだったと振り返っている。
昭和29年(1954年)乱歩60歳 ①
還暦の歳、『修善寺物語』を記念する「綺堂祭」のため、捕物作家クラブに同行し修善寺を訪れる。修禅寺での法要ではスピーチをしたり、夜には町の芝居小屋で作家画家の歌合戦にも出場。乱歩自身は不参加だったものの、変装した作家たちを見破る懸賞をかけた企画もあったとか。
昭和29年(1954年)乱歩60歳 ②
小説の構想を練りに伊東へ滞在。その際に先祖のお墓を建てた東向寺(とうこうじ)が現存していることを知り、伊東と修善寺の間にある冷川村にも足を運ぶ。様々な資料を見せてもらい、その後、『わが夢と真実』に「先祖発見記」として家族の歴史を書き記す。
参考・出典資料: ・探偵小説四十年(下) 〜江戸川乱歩全集第29巻〜(光文社文庫) ・わが夢と真実 〜江戸川乱歩全集第30巻〜(光文社文庫)
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